|
先日の機関紙に紹介して頂いた内科医です。
慢性疲労症候群を専門にしています。
提示版を拝見しましたが、慢性疲労症候群患者さんの訴えと非常に似ていることに驚いています。
慢性疲労症候群は、原因不明の自発性の欠如「ものぐさ」の病気です。
脳血流低下が、多くの患者で認められることは、最近の米国の教科書にも記載されています。
ただ、脳血流低下が認められる脳の部位が個人により異なることが知られており、このため、自覚症状が多彩であることがわかってきています。
ご参考になるかわかりませんが、脳血流低下が認められる慢性疲労症候群について述べてみます。
慢性疲労症候群患者に共通する最初の自覚症状は、脳機能である体内リズムの障害による朝の起床障害です。
朝に覚醒しても、体にオモリがのっているようで体が動きにくいため、床から出ることができない。
一部の患者さんでは、寝付くのが、午前3〜4時になりますので、起床が正午ごろになります。
多くの場合、昼食後〜夕方に、一時しんどくなりますが、夜になると元気になります。
このため、深夜まで起きていることが多く、昼夜逆転の生活になります。
このような状態は、成長期で身長がのびる頃から発病することが多く、女性では、小学校高学年〜中学生、男性では、中学生〜高校生に発病します。
昼夜逆転の生活により、成長期の運動量が制限されます。このため、ほとんどの慢性疲労症候群患者さんには、筋肉の発育障害が認められます。特に、背骨にある筋肉が非常に弱く、首〜腰のだるさ、脱力を自覚します。
横になると、重力負荷が減少しますので、このだるさは軽快します。筋肉障害は、御自分でも確認ができます。
特に、うつぶせになって、特に左の腰(ベルトがかかる部位)を、指で押さえると強い痛みを自覚します。
女性の場合には、筋肉量が少ないために寝たきり状態になりやすいですが、男性の場合には、手足の筋肉が保たれていることがありますので、サッカーなどのスポーツが可能な患者さんもおられます。ただし、このような方でも、首〜腰の背骨にある筋肉の発育障害が認められます。このため、一部の患者さんでは、1時間以上じっと座ることができません。
じっと座っている(乗車など)と、眼の奥の不快や頭重感などの自覚症状が急に出現してきます。
この場合、立ち上がって数歩でも歩くと、これらの不快な症状は消失します。
このため、じっと座ることができずに、立ってしまいます。この現象は、学校の授業中や診察待合時にも認められます。
このような症状が、風邪の後、気温の低い時、気圧の低い時(雨、雪)、女性では、月経7日前〜月経開始に増悪します。
また、慢性疲労症候群では、脳機能である体温調節が障害されている場合も多く、冬の暖房や熱い風呂、夏の冷房に、倦怠感がおこりやい傾向があります。
慢性疲労症候群では、首や腋(わき)の下にリンパ節が腫れて、指で押さえると痛みがあります。
いわゆる、首や腋のグリグリを指で押さえると痛みがあります。常に認められることは少なく、強い倦怠感があるとき(特に夕方や不眠時など)に認められます。
この時には、喉の奥にも不快感があり、風邪のような熱っぽさを自覚されることもあります。
このような、リンパ節の痛み、喉不快感の存在が、いわゆる精神的障害(神経症や自律神経失調症、うつ病など)と慢性疲労症候群との鑑別点とされています。
一度、御自分の症状と比べてみてください。
慢性疲労症候群患者さんの共通する心理状態は、漠然とした、周囲に理解されない自覚症状「ものぐさ、体に鉛がくっついたように重くて体が動かない」に対する不安感が最初におこります。
最初は、周囲(特に母親)に理解してもらうことに努力しますが、最終的には、自分自身への自信を失います。
自信喪失から、言動を介しての家族への暴力が始まります。
大切なことは、漠然とした自覚症状を本人にしっかりと理解させることです。
このため、診療では、脳血流低下などの客観的な異常所見を、毎回の診察時に本人に見せて、本人の言葉で、病気を理解していることを確認するように心がけています。
このことで、多くの慢性疲労症候群患者さんの家庭内暴力は、明らかに軽減していきます。
精神安定剤の使用は、本人の希望に沿いますが、使用したことはありません。
最も難しい医療目標は、失われた自信を取り戻すことです。集団治療を行っていた患者さんもおられました。
父親のリストラをきっかけにして、御自分で社会復帰に努力されるようになった方もおられましたが、医療機関やカウンセラーよりも、御家族との日常生活の中で本来の自信を回復された方が多いようです。
何か疑問な点がございましたら、ご連絡ください。
平成15年3月16日 神戸市北区日の峰4−2−4
医療法人社団小川クリニック 小川良一

|