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KHJジャーナル「たびだち」91号(リニューアル創刊号)から、「連載 データで見るひきこもり②」冒頭部分をご紹介!


連載 データで見るひきこもり②「ひきこもりから回復するとはどういうことか?」

宮崎大学教育学部 准教授 境泉洋(KHJ副理事長)

2018年に行ったKHJの全国調査では、52名のひきこもり経験者に調査に協力を得られた。この中で、自身のひきこもり経験について回答した49名の内訳を見ると、現在もひきこもり状態にあると回答した人が17名(現ひきこもり群)、ひきこもりを経験したのは過去であると回答した人が32名(元ひきこもり群)であった。この2つの群を比較することで、ひきこもりから回復するとは、経験者にとってどのような意味を持つのかについて、検討してみたい。
この二つの群で違いがあるのが、ひきこもり期間の長さである。元ひきこもり群のひきこもり期間は平均7年8ヶ月であるのに対して、現ひきこもり群は平均12年9ヶ月となっている。現ひきこもり群は更にひきこもり期間が長期化していく中にあるため、この差はますます開いていくことになる。

また、ひきこもり状態の程度について見てみると、興味深い結果が出る。二つの群で統計的に有意な差があるのが、対人交流の必要な場所に行けるかどうかという点のみである(図1)。当然のことながら、現ひきこもり群は対人交流の場には行けていない。ひきこもりの程度については、他にも、自由に外出する、家庭内では自由に行動する、家庭内で避けている場所がある、自室に閉じこもるという項目があるが、これらの項目については、二つの群間で明確な違いが認められなかった。つまり、二つの群を分けるのは、対人交流の必要な場所に行けるか否かという違いであることが分かる。
この結果で補足しておきたいのが、自由に外出するという項目において統計的には差がないことである。ただし、この点については、外出日数を比較してみると明確な違いが出る。1ヶ月の外出日数に関しては、現ひきこもり群が平均12日なのに対して、元ひきこもり群は22日と大きな差がある。自由に外出するとはいっても、現在ひきこもり状態にある人は、外に居場所がないため、その頻度が少なくなるものと推測される。
このように見てくると、ひきこもり状態ではなくなることは、大きな変化をもたらすように感じられるかもしれない。しかし、社会参加に対する困難感か不安、うつの程度といった心理的ストレスについて、二つの群を比較すると明確な差を見いだすことができない。ひきこもり状態でなくなるということは、社会参加に対する困難感、不安、うつなどの心理的ストレスから解放されるかのように感じるかもしれないが、実際は、ひきこもり状態を抜け出したとしても、ひきこもり状態にある人と同様に生きづらさを抱えているのかもしれない。
では、ひきこもりから回復するというのは何を意味するのであろうか?ひきこもり状態の心理について測定する項目(Hikikomori Questionnaire:以下、HQ)を比較する中で、そのヒントがある。

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