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保健所等における「ひきこもり相談支援の状況」報告書  保健師さんのためのひきこもり支援実践ハンドブック


保健所等における「ひきこもり相談支援の状況」調査結果報告書
保健師さんのための支援実践ハンドブック

①保健所等における「ひきこもり相談支援の状況」調査事業  ②保健師さんのためのひきこもり支援実践ハンドブック

保健所等における「ひきこもり相談支援の状況」調査結果報告書(報告書とハンドブック 全78ページ 5MB)

保健師さんのための支援実践ハンドブックのみ(全25ページ 2MB)

事業目的

ひきこもりの問題は、本人が自ら関係機関に出向いて、支援を求めることが大変に難しい状況にある。ひきこもる本人が動けないなか、まず相談に訪れる家族への適切な対応が、その後の本人の回復への重要な鍵となるものの、家族の相談機関での心理的傷つき体験は、本人、家族の4割が経験しており、それに起因する支援の途絶が、ひきこもりの長期化、ひいては長期高年齢化につながる事例も報告されている(KHJ平成29年度調査)
ひきこもり相談支援の状況においては、厚労省「10代・20代を中心とした『ひきこもり』をめぐる地域精神保健活動のガイドライン(平成15年)」等、保健所・保健センターにおける、ひきこもり家族支援の重要性が説かれているとともに、その対応が期待されている。当会の調査(平成28年度)からも、保健所は、家族が相談に訪れる可能性の高い機関になっている。また、保健所のなかでも、家族教室の実施の有無、家族支援の状況にも対応に違いがあると考えられる。
本調査では、保健所・保健センター等におけるひきこもり相談の実施状況を把握するとともに、各機関の支援担当者が直面しているひきこもり相談の課題等に関する認識を明らかにすることを目的とした。また、本調査を通じて、ひきこもり相談をより一層充実するための方策を検討し「ひきこもり支援実践ハンドブック」としてまとめることを目的とする。

事業概要

事業では、有識者とともに家族支援調査委員会を設置し、全4回の委員会を開催し、以下の調査を実施した。
1)質問紙調査:調査の内容は、ひきこもり相談への対応、本人・家族からの相談の状況、訪問支援の状況、潜在的ニーズの把握、地域家族会との連携等を含む家族支援の状況、相談訪問支援の課題に関して、19項目の質問で構成した。本調査は、関東6都県における各都県の管区分エリアから、3~4カ所の保健所・保健センター等を層化無作為抽出法によって抽出した127機関に対して、調査票を郵送し、2018年10月10日~11月16日に実施した。
2)聞き取り調査:ひきこもり支援を先駆的に実施している保健所・保健センター・精神保健福祉セン
ター等(以下、保健所等)を対象に、ひきこもり相談に携わっている担当者に聞き取り調査を行い、保
健所等のひきこもり相談支援の実施状況や、地域の家族会をはじめとした諸機関との連携について明ら
かにした。調査期間は2018年10月~11月であり、調査対象は、8機関(東京都近郊7機関、北陸地区
1機関)であった。調査担当者が1~2名で訪問し、調査班であらかじめ検討した調査項目の入った「保
健所等調査:聞き取り調査シート」に聞き取り内容を記述した。

調査研究の過程

1)質問紙調査:
調査は、以下の主要項目について行った。
1)質問1:ひきこもり相談への対応(県型保健所、政令市型、市町村型)
2)質問2:本人・家族等からの相談の状況(40代以上の割合を含む)
3)質問3:訪問支援について(対応方針および現状)
4)質問4:潜在的ニーズの発見と対応 (発見、支援する上での困難)
5)質問5:ひきこもり家族会・家族グループ等による支援の状況
6)質問6:ひきこもり相談支援・訪問における配慮・工夫および課題
7)質問7:ひきこもり相談におけるニーズや困りごとについて(自由記述)
※【資料】保健所等における「ひきこもり相談支援の状況」調査票は、別冊(報告書)に記載。
調査対象とした127機関のうち、およそ3割に当たる41機関から回答があった。回答には、ひきこ
もり相談を業務としていない機関が3か所含まれていたため、結果の集計は38機関について行った。

2)聞き取り調査:
聞き取り調査は、以下の項目について行い、現場のヒントとなる実践例を積極的にヒアリングした。
語られた内容は、全体を設問内容別に分けて整理した項目及び、機関ごとに紹介する項目を設け、各機
関の様々な工夫、配慮例を掲載した。
1)実態調査実施の有無について
2)相談の体制
3)支援方針の決定
4)訪問について
5)関係機関との連携
6)ひきこもり家族会の設置状況と連携状況
7)ひきこもり支援の継続状況
8)支援の中断の状況と対応、分析
9)担当者異動等でケースを引き継ぐ際の対応と工夫
10)8050世帯への対応
11)高齢世代への働きかけについて
12)保健所等、保健センター内のひきこもりに関する学習の状況について
13)管内の地域住民への広報・啓発
14)ひきこもりに取り組む課題と展望
15)特に印象に残っているケース

事業結果

質問紙調査、聞き取り調査の結果概要、課題、展望は以下のとおりである。

●相談の継続状況
2~3回で相談に来なくなったと認識している回答者が、全体の50%を占めた。一方、「精神保健相談」に形を変えて継続するとの回答も37%ある他、ひきこもり専門相談機関へつなげる支援が行われていることがわかる。継続的に相談支援をしていたが途中で終了したケースでは、「来談者の相談意欲が低下した」という理由が最も多かった(34%)
聞き取り調査から、中断の理由として、家族では①両親の考え方の不一致、②本人の強い拒否、③即効性を期待した結果の期待外れ、④うつや疲弊による相談意欲の減退、が挙がった。本人では、コミュニケーションが続かない、保健所等では、①対応側の知識不足・技能不足、②対応の余裕のなさが挙がった。

●ひきこもりケースへの訪問支援について
訪問支援に関しては、会うことが難しいという回答が8割を超えた。継続困難で、進展の見通しが難しいと認識していることが伺われる。
聞き取り調査では、訪問実施の判断は慎重かつ事前準備を細やかにし、情報収集(基本情報、趣味、好み等)を行い、訪問日時については家族を通して事前に通知していた。訪問時の配慮は、本人が恐怖に感じないように、脅かさない態度で、無理に会うことはしていないなどが挙がった。

●潜在的ニーズの発見ルート
支援につながらず、長期化しやすい家族における潜在的ニーズの発見ルートとして、地域包括支援センターが最も多くの実績があり(58%)、次いで精神保健センターが42%であった。可能性を含めると、ケアマネジャーや福祉事務所、生活困窮者自立相談窓口が多くなっており、8050問題を反映して、こうした福祉サービスとの連携に期待していることが伺われる。

●家族支援の実施状況
家族会・家族グループを実施していないとの回答が6割近くあり、ひきこもり支援に関して重要と言われている家族支援が十分提供されていない実態が明らかとなった。
聞き取り調査では、家族会は保健所が運営したり、自助グループとして家族会との連携を行っているところがあった。

●課題について
ひきこもり支援の課題として、4割を超える回答者が、情報不足と業務に余裕がないことをあげ、6~7人に1人は関わり方のスキルが足りないと感じている。一方、配慮や工夫についての自由記述では、本人や家族が孤立しないよう電話連絡を継続したり、家族のみの相談でも良いとことを伝えたり、訪問の際などは、結果を急がずスモールステップを心がけるなど多くの工夫が寄せられた。
聞き取り調査でも、人員不足、支援センターが遠方で来所が困難、支援機関同士の理解不十分、スタッフの技術力の不足、即効性を求める家族対応への苦慮が挙がった。

●継続のための工夫
配慮や工夫についての自由記述では、本人や家族が孤立しないよう電話連絡の継続や、家族のみの相談でも良いことを伝える、訪問の際などは、結果を急がずスモールステップを心がけるなど多くの工夫が寄せられた。
聞き取り調査では、小さな変化をフィードバックする、予定の時間に来ない場合は連絡する、関係をこわさないように注意する、中断している人に理由を見つけては連絡、訪問をしているなどが挙がった。

●社会的孤立への対策について
「8050問題」については、実態がみえない部分もあるが、地域包括との連携は必須であること、訪問系サービスからの情報提供を活用すること、民生委員との連携などにより、家族がSOSを出さない場合に、訪問するきっかけづくりの重要性が示唆された(公共料金不払い、訪問理容、訪問リハビリなど)。
連携対象の拡大と強化については、地域包括が過重負担にならないような連携構築と、連携する組織体系の見える化、活動内容の周知、ネットワークの構築の必要性が明らかになった。
支援機関への啓発として、ひきこもりの理解の促進、特にひきこもりが長期化しない手立てへの理解の深化、事例検討会などを活用したスタッフのスキルアップの促進が求められている。また、経験の蓄積とともに、諦めない支援の継続が、孤立の打開策となっている。

●今後の課題と展望
今後は、支援技法の開発、向上をはかること、支援窓口をわかりやすく示すこと、当事者家族との連携協働により、早期支援やいわゆる8050問題に対応していくことなどが課題として挙げられた。
また、支援機関同士の理解・連携の強化として、ネットワークの構築を促進させるために、ひきこもり支援機関の全体の体系化、見える化が必要であること、支援体制の充実としては、24時間対応システム、ひきこもり支援センターの地元設置、アウトリーチ専門員の設置、自助・共助的な取り組み、居場所等の一歩出る場所の充実が今後の展望として挙がっていた。

事業実施機関

KHJ全国ひきこもり家族会連合会本部
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